毎週1回のペースで開催されるはずだった“目先だけ”の
皇族数減少抑止策を巡る各党協議=全体会議。
しかし、第2回目迄で早くも躓いた。
今後は、衆参正副議長が個別に各党派の意見を聴いた上で、
必要に応じて全体会議を開く方式に、大きく転換した。これは、当初の拙速·乱暴な進め方を見直したことを意味する。
よって、一先ず歓迎したい。全体会議と言っても、13の政党·会派が一堂に会して、
各党派の代表者がそれぞれ5分間ずつ意見を述べて終わり、
というほとんどセレモニーに近い運営だった。
言いっ放し聴きっ放しという無責任さだ。これに対して、立憲民主党などから、それぞれお互いが
真意を確かめ合う応答も含め、合意を目指して慎重かつ
丁寧に進める必要があるという、当然な注文が出ていた。又、結論が出るまで議事録を公開しない“密室”方式に対しても、
批判があった。
憲法上「国民統合の象徴」であられ、その地位が「国民の総意」
に支えられるべき天皇·皇室を巡る制度についての
重大な協議の場に相応しくないとの批判だ。
これは会議の参加者だけでなく、議論から
完全に締め出された形の国民からも、そうした声が挙がっていた。それに加えて、第2回会議が開かれた当日の5月23日に発売された
『週刊新潮』に、とんでもない記事が載った。
額賀福志郎衆院議長の強引な会議の進め方を、
あたかも上皇后陛下のご意向によるものであるかのように報じ、
正当化する記事だ。これに対して、西村泰彦·宮内庁長官が即座に
「上皇后さまが額賀議長に皇位継承について何か
お話になったことは全くない」と全面否定。
先の記事は、額賀議長サイドのリークとしか考えられない為に、
かえって同氏の主導性を後退させる結果を招いた。皇室のご念願は、あくまでも「安定的な皇位継承」である。
そのことは、これまで知られているいくつもの事実から、明らかだ。
それを、政治家が勝手に自分の都合が良いように捻じ曲げて
“政治利用”することは、決して許されない。
今回の額賀氏の蹉跌の背景として、差し当たり
以下のような要因が考えられる。①額賀氏の参院サイドとの調整不足。
第1回全体会議の最後に、これから審議すべき法案が
立て込んでいる参院の尾辻秀久議長が、わざわざ発言を求めて
「参院のスケジュールにも配慮願いたい」と、敢えて額賀氏に
釘を刺す異例の場面があったという。
実際に、第2回全体会議では参院議員のメンバーの欠席が目立った。
参院側だけでなく、衆院副議長の海江田万里氏も「立法府の総意」を
目指すはずの協議なのに周りを顧みない額賀氏の
マイペースぶりに、距離感を抱いていた可能性がある。②立憲民主党などの正常化への努力。
議事録の非公開や「先にスケジュールありき」の無理な進め方には、
立憲民主党だけでなく、他の党派にも違和感が強かったようだ。
永田町界隈では「解散·総選挙があれば衆院議長は交代。
なので、6月又は10月解散が囁かれている中、額賀氏は
自分のレガシー作りの為に急いでいるのではないか」などという、
意地悪な観測も囁かれている。それが事実かはともかく、他ならぬ皇室を巡る重大案件への取り組みで、
このような蔭口を叩かれること自体、額賀氏の手法の拙劣さを示す。③いち早く各党協議の不健全さに気付いた国民が、
タイミングを失わないで行動した。
議事録の速やかな公開と、テーマの重大さに相応しい慎重·丁寧な
議論を求める声を挙げ、実際に政治の現場にも届けた。かくて今回の額賀氏の躓きは、同氏の自業自得とも言えるし、
有志国民による小さな勝利とも言えるだろう。
少なくとも、“密室”でセレモニーを重ねてスケジュール通り、
今国会中に有識者会議報告書を“丸呑み”するという
最悪のシナリオから抜け出せる可能性が、少しだけ開かれた。勿論、だからと言って油断は禁物だ。
ここから国会の会期末迄が、まさに正念場と言える。
密室会議の中断により、皇位継承問題に理解と熱意のある
政党·会派に、国民から応援の声を届ける時間が、
たとえ僅かでも与えられた。これはチャンスだ。先頃の共同通信や毎日新聞の世論調査などで、
サイレント·マジョリティーの意思は改めて明らかになった。
しかし、それだけで最低の決着を押し戻せる訳ではない。皇室を敬愛し、その将来を本気で憂える国民は、
この大切な局面で声を挙げ、アクションを起こそう。
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